「ローグライク」はなぜ人気ジャンルになったのか? 40年以上の進化をたどる
1980年の『Rogue』から現在まで、ローグライクはどのように枝分かれし、広がってきたのか。ジャンルの成り立ちをたどります。
すでにゲームジャンルの一角には、「ローグライク(Roguelike)」が確固たる地位を築いています。その主な特徴は、潜るたびに作り直されるダンジョン(プロシージャル生成)、死んだら最初からやり直しになる「パーマデス」、プレイするたびに変わる入手アイテム、限られたHPや回復手段などの資源のなかで試されるプレイヤーの判断力などです。
では、ローグライクはどのように生まれ、今やインディーゲームの主戦場と呼べるほどに成長したのでしょうか。
そもそも「ローグライク」という名称は、1980年頃に誕生したUNIX(Linuxの源流となったOS)向け探索RPG『Rogue』に由来します。画面いっぱいに文字を敷き詰めたシンプルな作りながら、すでにダンジョンのプロシージャル生成、主人公と敵が交互に行動するターン制、マス目に区切られたグリッド状の空間、正体不明のアイテム、パーマデスなどを備えていました。
出発点となったのは、テキストアドベンチャー『コロッサル・ケーブ・アドベンチャー』の探索要素や、テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のルール体系を再現することでした。一度解けば終わりのアドベンチャーゲームや、複数の仲間が集まらなければ遊べないTRPGの弱点を克服し、「何度でも繰り返し、ひとりでプレイできる」ゲームを目指したわけです。
その目論見通り、「作者自身にも先が読めず、プレイヤーが失敗から知識を蓄積していく」ゲームが誕生しました。開発者のひとりも「作った自分たちさえ驚けるゲーム」を目指したと回想しています。
『Rogue』から『Moria』や『NetHack』への派生
1980年代を通じて、『Rogue』はUNIXを利用する大学や研究機関を中心に広まりました。そこから数多くの模倣作や発展形が生まれ、それぞれ異なる設計思想を追求することで、ジャンルを豊かにしていったのです。
大きな転換点のひとつが、1983年に登場した『Moria』です。J.R.R.トールキンの『指輪物語』に影響を受けた世界観を取り入れ、広大な地下ダンジョンを探索するゲーム性を追求しました。その後の発展版では、地上の町で物資を調達する仕組みも加わりました。
この系譜は後に『Angband』(1990年)へと引き継がれ、ユニークモンスターやアイテム、特殊な部屋などが大幅に拡充されました。「敵をなぎ倒し、戦利品でキャラクターを強化し、さらにダンジョンの奥深くへ潜る」という、ハック&スラッシュの快感を追求したのです。こうした『Moria』や『Angband』のゲーム性は、後に『Diablo』(1996年)の開発者にも大きな影響を与えました。
もうひとつの系譜が、『Hack』(1984年)の派生作品を統合した『NetHack』(1987年)です。武器や薬、巻物や罠、地形やモンスターなどに個別の性質が与えられ、それらを相互作用させる面白さが生まれました。
死体を武器として振り回す、物を薬に浸す、変身の杖で主人公やモンスターを別の姿に変えるなど、思いもよらない手段で危機を切り抜けられます。いわば「発想による勝利」が可能になったわけです。
ローグライクの面白さを家庭に持ち込んだ『トルネコの大冒険』
そうしたなか、ローグライクを家庭用ゲーム市場へと大きく広めた作品のひとつが、『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』でした。ランダムに姿を変える迷宮と、何度も挑戦する反復性を、『ドラゴンクエスト』の世界観とともに家庭用ゲーム機へ持ち込んだのです。
キーボードの多数のキーを駆使する複雑な操作を、十字キーと数個のボタンに集約。さらに、アイテムの出現率や敵の強さを手作業で緻密に調整し、ランダム性を制御しました。それまでは「引きが悪かった」で済まされがちだった運の要素を、プレイヤーの知恵で克服できるバランスに落とし込んだことが、普及の大きなきっかけとなったのです。
さらに、同じチュンソフト(当時)が開発した『風来のシレン』シリーズでは、装備の合成・強化システムも発展し、位置取りをめぐる駆け引きは詰め将棋のように研ぎ澄まされました。『Rogue』の系譜に由来する奥深いルールや複雑なゲーム性を保ちながら、遊びやすさとゲームバランスを徹底的に調整。「子供でも楽しめるジャンル」へと昇華させていったのです。
恒久強化を追加、アクションやカードゲームと融合した「ローグライト」
ここまでの作品は、おおむね「ターン制とグリッド状の空間」という枠組みを守っていました。その制約を取り払い、プロシージャル生成された環境やパーマデス、即興の判断力といったローグライクの中核要素を抜き出して、別ジャンルとの融合を広く知らしめた代表作が『Spelunky』(2008年フリー版/2012年商業版)です。2D横スクロールと物理演算を組み合わせたアクションゲームにローグライクの仕組みを持ち込んだことで、ジャンルの裾野は一気に広がりました。
最近のローグライク系作品に定着している恒久的な強化、つまり「集めたコインやアンロック要素を次回以降の周回に引き継げる」システムを採用した初期の代表例が、『Rogue Legacy』(2013年)です。
キャラクターが死亡すると、その子孫が冒険を引き継ぎます。前の世代が獲得した資金で城を拡張することで、次世代のキャラクターの初期能力を底上げできるのです。これによって「完全リセット」が緩和され、挑戦を繰り返すほど有利になる仕組みが生まれました。これは意図的な設計であり、同作は自ら「ローグライト(Rogue-lite)」と称し、この呼び名を広めた代表作のひとつでもあります。
こうした流れを受け、『Slay the Spire』(2017年)はデッキ構築とローグライクの構造を融合。『Hades』(2020年)は「繰り返される死と地上への脱出」を物語の軸に据え、『Balatro』(2024年)はポーカーの役と爆発的な相乗効果が生み出す中毒性を追求するなど、それぞれ独自の魅力を加えています。
いずれも多様なプレイヤーの嗜好に応えながら、ローグライクの仕組みを「何度でも遊べる」強力なリプレイ性の原動力として活用しているのです。
プレイするたびに新鮮な体験が待ち受け、死と再生を繰り返しながらも、費やした時間はプレイヤーの知恵や経験、キャラクターの強化という形で報われる。ローグライク/ローグライトは今後もさまざまなゲームジャンルの魅力を取り込み、多彩な新作が登場することになりそうです。
