『アニマロイドガール』を開発しているPANDRI-DON(パンドリ丼)と申します!
本作は趣味と偏愛に満ちた(満ちすぎた何かがこぼれ落ちてドロドロになった物質のような)ゲームを産み落とすことを目的としたプロジェクトです。
本記事では、どんな“偏愛”なのか、その一端を書き出します。
開発のコアは、ゲーム開発者である“Mar”と“ザクロスケ”、イラストレーターの逢編いあむさんの3人です。
この3人に加えて、音楽家の岩垂徳行さん、DÉ DÉ MOUSEさん、Rei8Bitさん、CGクリエイターの藤田将さんらにサポートいただく体制で進めています。
少々狂ったものを作るとしたら、独りでやるか、このくらいの小規模チームが最適解です。
何故、本作では小規模チームを選んだのか。 それは、自分が思う趣味と偏愛に満ちたものは、隅々まで自分色で染めあげるよりも、イラストや音楽など、信頼しているクリエイターの感性と、自分が作ったものとが混ざり合うことでしか生まれえないと考えたからです。
ゲームを作りはじめるとき、途中でブレないように完成イメージを定義するようにしています。
アニマロイドガールが「趣味と偏愛に満ちたゲーム」と呼んでいるものの定義は、
“自分だったら欲しすぎて何を置いても絶対買うゲーム”です。
これはユーザーペルソナにも似ていますが、違います。 ターゲット属性を掘り下げる概念ではなく、「自分だったら絶対買う」理由の強さが重要。
例えば、lainの続編と、GTA6と、ペルソナの新作と、遙かなる円形世界が同時に発売されたとして、買えるゲームが1〜2本だったしても、自分にとってはアニマを買ってしまうくらいの存在にする。 それが、“自分だったら絶対買う”の定義なのです。
× 好きな要素を集めたもの
〇 他の作品差し置いても絶対に欲しくなる理由をもったもの
のような違いです。
ここで、この開発ログを書いているMaについて自己紹介させてください。
本業はゲーム開発者です。 ゲーム機、PC、スマホのいろいろなゲームを作ってきました。
職種はディレクター、シナリオライター、ゲームデザイナー、デモシーン演出、モーキャプディレクション、映像編集、効果音など……守備範囲は広いほうです。アクションゲームなら地形を生ポリでモデリングするくらいまではやります。テクスチャは苦手。
シナリオはZill O'll infinite(※1)のフリーシナリオのような自由度がたかいもの、リアルタイム会話のような演出や操作と密接したドラマを作るのが好きです。
インディーゲームでは3DSTGの『VECTROS』(※2)、ドット絵エディターがついた『アクアリウムwithクロック』(※3)、『殉職刑事!』(※4)などを作りました。
ゲームジャンルとしてはADVが好きで、特に『ポリスノーツ』(※0)は各機種版全てをプレイしました。アニマロイドガールが、ポイントクリック + 選択肢 + アニメーションという構成なのはここから来ているのかもしれません。 (インディーゲームだと『シロナガス島への帰還』もその形式ですね)
好きなゲームは『NOëL NOT DiGITAL』『Serial experiments lain』『ノスタルジア1907』『ANNO: Mutationem』『BioShock』『クーロンズゲート』『the Manhole』『メタルギア2(MSX2))』『Cyberpunk2077』『ベオグラードメトロの子供たち』『レイノス』『ギャラクシーフォース2』『DQ3』『GTAⅤ』『夕闇通り探検隊』『ムーンライトシンドローム』など……。(書ききれない)
と、自己紹介はこのくらいで、アニマロイドガールと趣味と偏愛について話を進めます。 (他のメンバーのことも後日紹介したいと思います)
(↓ケモノへの変化が進み、髪の毛の量が増え、体毛が身体を覆い始めている)
ヒトからケモノへ変わりゆく少女と暮らしながら、研究していくマルチエンド&フリーシナリオ型ADVです。
本作で描くのは、ヒトから変化して現れる、ヒトとは違う存在――ケモノ=“アニマ”です。
ケモノへの変化はネコ、狼、ウサギの3タイプ(何れか)に分岐。 変化は少しずつ進行し、小さな耳が生え、しっぽが生え、それが成長し、やがて毛深く、眼球や体型も変化し、種ごとの特徴が強くなっていきます
研究パートと日常シーンを交互に繰り返して日々が進み、選択によって彼女の運命は無数に分岐します。 ケモノ化の進行速度を変えたり、変化の方向性を決めたり、リスクを背負う覚悟があればヒトに戻すことを試みることも可能……。
彼女がどんなケモノになるのか、どんな絆を結ぶのか、どんな未来が待つのか。
親身な保護者として接するのか、マッドサイエンティストとして接するのか、あるいはその中間か――あなたの理性と欲望が試されます。
プレイヤーが選択に責任を負い、その積み重ねが形となってゲーム展開に反映していく仕組みとすることで、一本の物語を追うのでは無く、自分自身の思い出として刻まれ、振り返られる体験を作っています。
趣味と偏愛に関わる大切なところなのですが、本作では少女がケモノ化していくディールを映像でも、設定面でも描いていきます。
肌が毛深くなっていく様子、ヒトの耳が小さくなっていく様子とそれを見られることを嫌がる少女の描写。
それらを間近で観察することを許された立場にあるのが、プレイヤーであるあなたなのです。
本作は全編がほぼアニメーションで表現され、進行します。
マウス操作に反応して表情や視線がリアルタイムに動くインタラクティブ表現や、会話中も動き続ける仕草と表情によって、「映像」で少女の感情やドラマを表現しています。
これは、感情の機微や、少女自身が言語化しにくいとおもっている気持ちや価値観を、言葉では無く映像で表現し、それをプレイヤーがくみ取り、予測し、行動を考える体験を生み出すため。
日々の暮らしを体験していくことで蓄積される少女への関心や想い出が、少女への理解を深め、心を通わせていくことへと繋がります。
“言語化しにくいもの”を、文章で表現する方法もあるのですが、本作では映像で表現することに重きをおいています。
少女との物語で描かれる“不確かなもの”について思いを巡らせ、仮説を立て、自分が感じ取ったものを信じてみる。それは、美しく、儚く、価値のあるもの。
毎日同じように交わしている会話でも、今日聞いたときと、一週間後、一ヶ月後、一年後では、会話からくみ取れる解像度は、まったく異なるはずです。
それはプレイヤーが少女をより理解し、思い入れが高まり、言語化がむずかしいなにかに気がつけたから起きることなのです。
ネコアニマの例でいうと、耳や尻尾の成長から始まり、変化が進むと髪の毛の量が増え、やがて眼球がネコに近い形状に変わり、全身を体毛が覆うようになっていきます。
多段階で見た目が変化していくことは本作の偏愛の一つで、この実現のために長い時間をかけて開発しました。
研究者として、成長に触れ、関与し、育てていく体験を楽しみに待っていてください。
現在は解体され消失してしまった、かつて香港に存在した場所。 なぜ九龍城塞が舞台なのか? それはゲーム本編で明かされる謎の一つです。
内部を主観視点で移動できるパートがあります。 移動の雰囲気、とくにカメラワークはクーロンズゲート(※5)の影響を強く受けています。
また、クーロンズゲートの時代ではできなかったリアルタイムのポストエフェクト処理を使って、より“実体感を感じとれる”存在にするべく開発を続けています。
九龍城塞そのままではなく、サイバーパンクな九龍(※9)でもあるので、 雨の表現や、ネオンの光を浴びた世界の描写にも魂を吹き込んでいます。
この部分は後日、個別に掘り下げたいテーマとなるのですが、移動パートは場所移動するための機能ではありません。ここでの生活、発見、想い出の蓄積をするための演出上必須なパートとして存在しています。
趣味と偏愛に満ちたゲームの拘りとして、エンディングが終わっても、少女と自分の旅は終わってほしくないし、その先を描きたい、それをプレイヤーの脳内で生成し、熟成させたいという野望があります。
発端となったのは、『Serial experiments lain』(※6)。
PlayStation1の伝説的な名作で、とても説明しにくいゲームです。音声やテキストによる、記憶の断片のようなものを収集し、それがプレイヤーの脳内で再構築されることでlainという少女の人物像が脳内で生成されていくような体験が軸となっています。
アニマロイドガールはもっとストーリーがあるゲームではあるのですが、脳内に蓄積したものが再構築されることで、実感を伴った「少女と過ごした記憶」が脳内に焼かれていく体験を目指していて、これはlainをプレイした影響が大きいです。
もう一つの拘りとして、エンディングを終着点にはしたくない。
ゴールとしてたどり着く、マルチエンドの一つはそこに存在するのだけれど、プレイヤーの体験と、少女という存在の記憶はそれからも続いていく……というものを目指しています。
それはエンディングが通過点でクリア後のエピソードがある……というものではありません。
(エンディング後にお話が続いていくようにしたら、それってエンディング前にスタッフロールをもってきただけみたいになりますからね)
お別れがあって想い出がぷつっと途切れてしまう寂しさから逃れたいので、そうではない体験が得られる構造を考えています。エピローグみたいなものではなく。
エンデイングについてネタバレ無しで詳しく語るのが難しく、語るとしても迷宮のように長くなりかねないため、続きはいつか別の機会に掘り下げたいと思います(リリース後がよいと考えています)……。
開発初期につくったTrailerに、その後に作ったシーンを追加したVerです。
「わたしだけ、みんなと違う姿…… 可愛いって言ってくれた友達もいる……だけど…… ……好きでこんな風になったんじゃないよ…… どうしてわたしは『アニマ』なの……!」
普通のヒトだった少女は、突然発症したアニマ化によってケモノの姿へ変化していきます。 アニマ化はこの世界でもとても少ない症状。 世界にわずかしかいない「アニマ」になってしまった少女は人々から奇異の目で見られたり、特別な少数派の存在となってしまい、それが少女を悩ませます。 平穏な日常の居場所を失った喪失感。戸惑い悩む少女に、あなたはどんな手を差し伸べられるのでしょうか? そして少女はあなたの行為にどう応えるのでしょうか。 ケモノ化の行方も、少女の未来も、そしてあなた自身の未来も……
未来はあなたの手に委ねられています。
このゲーム内で過ごした日々がひとりひとりのプレイヤーにとって、かけがえのない価値を持つものになることを願ってつくっています。
楽しかったことも、悲しかったことも、物語はいつかエンデイングを向かえます。
雨の中の涙のように。
今過ごしている日々は、いつか必ず終わってしまう儚いものだからこそ、想い出は大切なのです。
(この思想はハイデガーの「存在と時間」(※7)や、「ブレードランナー」(※8)から影響を受けています)
拘ると更新しにくくなるため、気軽に思いついたことや、見て欲しかったことを短く投稿していこうかと考えています。 テーマは絞らないし、試行錯誤が多くなると思うのですが、反応や応援をいただけるととても励みになります!

【SNS / 動画サイト / 設定資料やグッズ通販】
(※0)ポリスノーツ
(※1)Zill O'll infinite
(※2) VECTROS
(※3) アクアリウムwithクロック
ドットエディタにプリセットされている時計は、lainの安倍吉俊さんに描いていただきました。(豪華ですよね)
(※4)殉職刑事!
安倍吉俊さんと作っていた、昭和の刑事ドラマ(太陽にほえろ)がモチーフのアクションADV。 プレイヤーが操作する刑事は毎回かならず殉職し、主人公が交代しながらストーリーが進行。リリースされなかった理由は、開発とは無関係のつまらない理由なので語ることは今後もないですが、刑事達や犯人のキャラが最高によかったのでいつか復活させたいです。 (キャラがわかるスクショ)
(※5)クーロンズゲート
(※6)Serial experiments lain
(※7)ハイデガー『存在と時間』
ドイツの哲学者マルティン・ハイデガー。 アニマロイドガールで描く、かけがえのない日々や儚さ、人生観はハイデガーからの影響を受けています(そのまま作中で言及したり、強く死を意識させたりはしないです。テーマを考えるきっかけとして、哲学からの影響を受けました)。
ハイデッカー(ハイデガー)の哲学は、私たちが「今、なぜここに存在しているのか」という根源的な問い(存在への問い)を追求し、死を自覚することで自分らしい生き方(実存)を取り戻すことを目指した思想です。代表作『存在と時間』で知られます。 引用
(※8)ブレードランナー
サイバーパンクのイメージを決定づけた映画。 原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」はもちろん好きですが、サー・リドリー・スコットの映画版のイメージが決定的に脳に刻み込まれています。 もっとも影響を受けた台詞は、ロイ・バッティが最後の時を迎えたときにつぶやく下記の詩的な台詞。
おまえたち人間には信じられないようなものを私は見てきた。オリオン座の近くで燃える宇宙戦艦。タンホイザー・ゲートの近くで暗闇に瞬くCビーム、そんな思い出も時間と共にやがて消える。雨の中の涙のように。死ぬ時が来た。
(自身が)死ぬことで「想い出」も消えていく、だからこそ生きているこの瞬間や、これからも生き続けるものを愛おしむ的な解釈になると思うのですが、アニマロイドガールの場合にどんな解釈となるのか、それは本編が完成したときにあなた自身が体験して確かめて欲しいです。かけがえのない想い出があなたの中に残るはずです。
(※9)サイバーパンクな九龍
ブレードランナーと、押井守版の攻殻機動隊をはじめて観たときの印象と、香港でネオン浴したとき体験した光を浴びる感覚を、本作の絵作りに生かしています。これは異国に来てしまった少女の気持ちをプレイヤーに感じてもらうためにも大切な要素です。
最後まで読んでくれて本当にありがとうございます! 開発頑張っているので、ぜひSNSや開発ログなどに感想や反応いただけるとうれしいです。
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