こんにちは。 インディーゲーム制作チーム「KUROSAWA CREATE」のKUROSAWAです。
今回は、Steamで配信中のシネマティック・タワーディフェンスアクションFPS『DEAREND』が、どのような過程を経て生まれたのか、その制作の裏側についてお話しします。
『DEAREND』は、最初の構想から数えると、完成まで約6年かかった作品です。
ただし、同じゲームを6年間そのまま作り続けていたわけではありません。
最初に考えていた『DEAREND』を一度作り直し、その後、別作品であるホラーゲーム『BIAS』の開発を経験しました。そして『BIAS』で得た知識や反省を持ち帰り、もう一度『DEAREND』を根本から作り直しています。
現在の形になった新しい『DEAREND』の開発には、そこから約2年半を費やしました。
何度も形を変えながら、それでも最初に作りたかったものを諦めず、制作メンバーと共に完成させた大切な作品です。
『DEAREND』の始まりは、「インディーゲームでも、映画のような物語体験を持つゲームを作りたい」という思いでした。
キャラクターが登場し、物語が展開し、その物語の中にプレイヤー自身が入って戦う。
エンディングを迎えたときに、映画を一本観終えたときや、小説を一冊読み終えたときのような余韻が残るゲームを作りたいと考えていました。
しかし、最初に構想していた『DEAREND』は、現在配信しているものとは大きく異なります。
当時も物語や世界観の根底には、現在につながる部分がありましたが、それをゲームとして成立させるための知識や経験が十分ではありませんでした。
自分たちが作りたいものと、実際に作れているものとの間に、大きな差がありました。
そのため、当初の形をそのまま完成させるのではなく、一度大きく作り直すことを決めました。
それでも、すぐに現在の『DEAREND』が完成したわけではありません。
『DEAREND』の制作を進める中で、私たちは短編ホラーゲーム『BIAS』の開発に取り組みました。
『BIAS』では、一本のゲームを企画から完成まで作り切る経験をしました。
プレイヤーをどのように誘導するのか。 限られた素材の中で、どのように世界観を伝えるのか。 演出と操作をどうつなげるのか。 制作規模に対して、何を残し、何を削るべきなのか。
実際にゲームを完成させ、プレイヤーの方に遊んでいただいたことで、制作途中では分からなかった多くのことを学びました。
特に大きかったのは、「自分たちが作りたいもの」だけではなく、「プレイヤーが実際にどのような体験をするのか」を考える視点を持てたことです。
『BIAS』を完成させたあと、改めて『DEAREND』を見直しました。
すると、以前は見えていなかった問題が数多く見つかりました。
世界観や物語があっても、それがゲームプレイに反映されていなければ、プレイヤーの体験にはなりません。
映像として格好良いだけでも、ゲームとして遊び続けてもらうことはできません。
そこで、これまで作ってきたものに継ぎ足すのではなく、『BIAS』で得た経験を生かし、現在の『DEAREND』を新たに作り直すことにしました。
ここから完成までにかかった期間が、約2年半です。
初期構想から数えれば、約6年。
途中で別作品の開発も経験し、二度の大きな作り直しを経て、ようやく現在の形にたどり着きました。
新しい『DEAREND』を作るうえで目指したのは、物語とゲームプレイを一つの体験として届けることでした。
本作は、一つの物語を約3時間で最後まで体験できる構成になっています。
各ミッションでは、戦闘と物語が交互に展開します。
キャラクターとの出会いや変化、世界に隠された真実、そして物語の結末までを、一つの流れの中で描いています。
ただカットシーンを長く見せるのではなく、カットシーンで生まれた感情が、その後のゲームプレイにつながることを意識しました。
物語の中で守りたいと思った人物や場所を、次はプレイヤー自身の手で守る。
そうすることで、映像を見る時間と操作する時間が分断されず、一つの物語体験として残る作品を目指しました。
一方で、長尺のカットシーンやキャラクターの演技、FPSとタワーディフェンスを組み合わせたゲームプレイを、少人数のチームで一つの作品として成立させることは、今振り返っても無謀ともいえる挑戦だったと思います。
制作中には、思い描いていたものをうまく形にできず、作ったものを大きく見直すことも何度もありました。
それでも、自分たちが本当に作りたい作品から逃げず、メンバーと一つずつ課題を乗り越えていったことで、最終的に『DEAREND』を一本のゲームとして完成させることができました。
『DEAREND』を一言で表すなら、「守れなかった人間が、もう一度守ることを選ぶ物語」です。
主人公のジョンは、かつて大切な家族を失った元軍人です。
AIによって崩壊した世界を生きる彼は、人間のような心を持つヒューマノイドの少女「キー」と出会います。
ジョンにとって、AIは自身の過去にも関わる、簡単には受け入れられない存在です。
それにもかかわらず、彼はAI側の存在であるキーを守り、共に旅をすることになります。
なぜ、守れなかったのか。 過去を抱えたまま、これからどう生きるのか。 憎んでいた存在を、それでも守ることができるのか。
ジョンとキーの関係には、『DEAREND』で描きたかった問いを込めています。
本作には人類とAIの対立が登場しますが、単純に「人間が善で、AIが悪」という物語にはしたくありませんでした。
人間と同じように感情を持つAIが現れたとき、私たちはその存在をどのように受け止めるのか。
人間とAIを分けるものは何なのか。
そして、悲しみや憎しみが繰り返される中で、その連鎖を終わらせることはできるのか。
そうしたテーマを、ジョンやキー、そして中枢AI「マザー」たちの行動と選択を通して描いています。
『DEAREND』というタイトルにも、単なる世界の終わりではなく、長く続いてきた悲しみや憎しみの連鎖に終止符を打つという意味を込めました。
作品のテーマを「守る」と決めたとき、物語の中で「守る」と語るだけでは足りないと考えました。
プレイヤー自身にも、ゲームを遊ぶ中で「守る」という行為を体験してもらう必要があります。
そこで生まれたのが、FPSアクションとタワーディフェンスを組み合わせるという発想でした。
プレイヤーはジョンとして銃を持ち、自ら戦場の最前線に立ちます。
同時に防衛設備を設置し、敵が進んでくる経路や戦場全体の状況を見ながら、守り方を考えなければなりません。
自分が前に出て敵を倒すのか。 防衛設備をどこに設置するのか。 どの場所を優先して守るのか。 限られた戦力を、どのタイミングで使うのか。
こうしたプレイヤーの判断そのものが、ジョンの「守る」という行動につながるように設計しました。
開発の途中では、視点や操作感についても大きな見直しを行いました。
当初は三人称視点でのゲームプレイも検討していましたが、プレイヤー自身が戦場に立っている感覚や、目の前に迫る敵への緊張感を強めるため、最終的にはFPSへと変更しました。
視点を変更すれば、カメラだけではなく、武器の見え方、敵との距離、移動速度、攻撃を受けたときの感覚、ステージの広さまで調整し直す必要があります。
大きな変更ではありましたが、作品が目指していた体験に近づくために必要な判断でした。
『DEAREND』の制作で特に苦労したのは、物語を描くカットシーンの制作と、FPSアクションとタワーディフェンスを融合させたゲーム体験の構築です。
キャラクターの感情を伝えるカットシーン
カットシーンは、キャラクターを配置し、台詞を再生するだけでは成立しません。
どこにカメラを置くのか。 キャラクターがどのタイミングで動くのか。 視線をどこに向けるのか。 台詞と台詞の間をどれくらい取るのか。 音楽や効果音を、どの瞬間から入れるのか。
一つの場面を作るために、多くの要素を細かく調整する必要がありました。
特にジョンは、過去の喪失を抱えながらも、それをすべて言葉にするキャラクターではありません。
キーもまた、人間と同じような姿や感情を持ちながら、人間ではない存在です。
二人の関係が少しずつ変化していく様子を伝えるために、台詞だけではなく、表情、視線、沈黙、立ち位置、カメラの距離などを使って感情を表現しました。
声を担当してくださった演者の皆さんから受け取った演技に合わせ、アニメーションやカメラを調整した場面もあります。
完成したと思った場面でも、ゲーム全体を通して確認すると、テンポが悪かったり、感情の変化が唐突に見えたりすることがあります。
そのたびにカメラやアニメーションを修正し、ときにはシーンの構成そのものを作り直しました。
同じくらい難しかったのが、ゲームプレイ部分の構築です。
防衛設備が強すぎれば、プレイヤー自身が銃を持って戦う必要がなくなります。
反対に、プレイヤーだけですべての敵を倒せてしまえば、防衛設備を設置する意味がなくなります。
FPSとタワーディフェンスのどちらかがおまけになるのではなく、両方が必要になる状態を作らなければなりませんでした。
敵の数や出現位置、防衛設備の性能、使用できる資源、武器の強さ、プレイヤーが移動する距離などを何度も調整しました。
また、数値上のバランスだけではなく、プレイヤーが次に何をすればよいのかを自然に理解できることも重要です。
戦いながら防衛設備を確認し、敵の侵攻を予測し、危険な場所へ自分で向かう。
複数のことを同時に求めるゲームだからこそ、情報の見せ方や戦闘のテンポについても試行錯誤を重ねました。
さらに、カットシーンとゲームプレイが完全に分離して見えないようにすることも意識しました。
物語の中で守りたいと思った存在を、その後のゲームプレイでプレイヤー自身が守る。
その積み重ねによって、ジョンの感情を説明として聞くだけではなく、プレイヤー自身の体験として感じてもらうことを目指しました。
映像として見せる時間と、プレイヤーが操作する時間を一つにつなげることが、『DEAREND』の制作で最も試行錯誤した部分です。
『DEAREND』は、初期構想から現在までに大きく姿を変えています。
ゲームシステム、視点、ステージ、演出、キャラクターの見せ方。
最初に考えていたものから、変わった部分は数多くあります。
それでも、作り直すたびに残り続けたものがありました。
それが、「守る」というテーマと、過去を抱えた主人公が誰かと出会い、最後に何を選ぶのかという物語です。
作り直すことは、それまで制作したものが無駄になるように感じる瞬間もあります。
しかし、最初の『DEAREND』があったからこそ、何が足りないのかを知ることができました。
『BIAS』を完成させたからこそ、プレイヤーの体験という視点を持って、もう一度『DEAREND』と向き合うことができました。
過去に作ったものを否定するのではなく、その経験を土台として、現在の形へ進んできたのだと思います。
我々のようなインディーゲームチームの制作では、時間も人数も限られています。
作りたいものをすべて入れようとすれば、いつまでも完成しません。
一方で、削りすぎてしまえば、最初に作りたかった作品とは違うものになってしまいます。
開発中は、「絶対に残さなければならないものは何か」を何度も考えました。
『DEAREND』で最後まで守り続けたのは、ジョンとキーの物語、「守る」というゲーム体験、そしてプレイヤー自身の行動によってテーマを感じてもらうことです。
すべてを大規模な作品と同じ密度で作るのではなく、約3時間の中に本当に届けたい体験を集中させる。
ロケーションや演出をただ増やすことよりも、物語の流れやキャラクターの感情が途切れないことを優先する。
そうした判断を積み重ねながら、少しずつ完成に近づけていきました。
詳しい内容は伏せますが、最後の場面では、特に『DEAREND』のテーマを受け取ってもらえる構成にしています。
開発中に試遊していただいた際、「世界観が良い」「雰囲気が好き」「続きを遊びたい」と言っていただけたことを覚えています。
自分たちが長い時間をかけて作ってきた世界を、初めて外の方に受け入れてもらえた瞬間でした。
完成後には、ジョンの決断に共感し、涙を流したと伝えてくださった方もいました。
もちろん、制作者が意図していた部分とは別の場面が強く印象に残った方や、想定していなかった方法で戦闘を攻略した方もいます。
ゲームは、完成して発売した瞬間に制作者だけのものではなくなります。
プレイヤーがどのように物語を受け取り、どのように戦い、どのような気持ちでエンディングを迎えるのか。
皆さんの反応によって、自分たちも初めて『DEAREND』という作品の新しい一面を知ることができました。
リリース後も、より多くの方に物語を届けるため、英語字幕や英語UIへの対応を行いました。
イベントへの出展や試遊を通して、直接感想をいただけたことも、制作を続ける大きな力になっています。
『DEAREND』は、決して一人で完成させられた作品ではありません。
私は主に企画やシナリオ、仕様、演出、全体のディレクションを担当しましたが、実際に作品として形にするためには、それぞれの分野を担当するメンバーの力が必要でした。
プログラム、3Dモデル、アニメーション、エフェクト、サウンド、音楽、ボイス、デバッグ。
一つでも欠けていれば、現在の『DEAREND』にはなっていません。
制作メンバーは、それぞれが仕事や生活を抱える中で時間を作り、アイデアを出し合い、何度も修正を重ねながら開発に参加してくれました。
思うように制作が進まない時期や、大きな方向転換が必要になった場面もありました。それでも、最後まで作品と向き合い、完成まで一緒に走ってくれたメンバーがいたからこそ、『DEAREND』をプレイヤーの皆さんへ届けることができました。
『DEAREND』は、メンバーと共に作り上げた大切な作品です。
改めて、開発に参加してくれたメンバー、キャラクターに命を吹き込んでくださった演者の皆さん、そして制作を支えてくださったすべての方に、心から感謝しています。
『DEAREND』は、大規模なチームによって作られた作品ではありません。
それでも、「小規模のインディーゲーム制作チームでも、映画のような物語と迫力のある戦闘を届けたい」という思いから、自分たちにできる限りのものを詰め込みました。
初期構想から約6年。
最初に考えていた形を作り直し、『BIAS』での経験を経て、もう一度作り直した現在の『DEAREND』。
遠回りしたからこそ、完成させることができた作品だと思っています。
決して順調な開発ではありませんでしたが、何度も作り直し、悩み、メンバー同士で支え合いながら、最後まで完成させました。
この記事をきっかけに少しでも興味を持っていただけましたら、ぜひジョンとキーの旅を、最後まで見届けていただけるとうれしいです。
そして物語の最後に、自分ならどのような行動を取るのか。
プレイヤー自身の手で、『DEAREND』の結末を体験していただければと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。