こんにちは、DreamShareです。美容と老いをテーマにしたホラー・探索サスペンスADV『いつまでも美シク - Villa NEPENTHES -』を開発しています。
現在はSteam絶叫フェスに参加中で、製品版ビルドもSteamの審査に提出しました。リリースは11月下旬を予定しています。
発売前の今回は、少し踏み込んで「開発にかかったお金」の話をします。AIを活用した個人開発の一例として、ほかのインディーゲーム開発者の方の参考になれば幸いです。
本作では、プログラミング支援や素材制作などにAIを活用してきました。今回、本作の費用として集計した支出は次のとおりです。
項目 内訳 金額
ChatGPT Plus 3,000円×7か月 21,000円
Suno AI Pro 1,200円×4か月 4,800円
ElevenLabs Starter 600円×4か月 2,400円
Steamストア登録料 1作品分 15,000円
テストユーザー協力費 2,000円×2名 4,000円
合計 47,200円
これは今回集計した現金支出です。開発用PCなどの設備費、電気代、自分自身の人件費は含めていません。また、発売前なので、最終的な開発・販売費用でもありません。
私自身の作業は、現時点で約560時間と見積もっています。
企画や仕様を考え、AIの出力を確認し、実装を直し、素材を選び、実際に遊んで調整する。その時間は、サービス利用料とは別に必要でした。
仮に自分の時間を時給3,000円で評価すると、人件費換算は168万円。実費と合わせると、約173万円の制作コストになります。もちろん168万円を実際に支払ったわけではありませんが、個人開発の採算を考えるなら、無視できない数字です。
現在までの制作分には、49のシーンファイル、探索・老化・偽装・対決・逃走などの独自処理があります。素材台帳では、背景35項目、CG44項目、立ち絵14セット、BGM44曲、SE57点などが制作済み扱いです。差分や未使用素材もあり、すべてが現行ビルドで使われているわけではありません。
この制作済み一式を外注に置き換える参考試算では、次の範囲になりました。
外注の試算
AIを活用した素材制作とプログラミングを外注……約286万~726万円
画像を描き起こし、音楽も新規制作して外注……約770万~1,760万円
工数・単価・素材点数を仮定し、消費税10%と調整用の予備費を含めた概算です。外注先から取得した正式見積ではありません。素材単価の参考には、背景制作の公開料金やBGM・SE制作の公開料金などを用いています。企画・シナリオ執筆、翻訳、フルボイス、広報、今後の残作業は対象外です。
ただし、この差額をそのまま「AIで削減できた金額」とは考えていません。 AIを使わず同じ条件で制作した比較実験ではなく、自分の作業が外注を代替した効果も含まれるためです。予算がなければ、そもそも同じ量を発注せず、規模を縮小していたはずです。
それでも、少ない現金支出で、この規模の作品を制作・検証できたことは、私にとって大きな変化でした。
一方で、開発を通じて強く感じた課題があります。AIのシナリオや設計を、そのまま実装すれば面白いゲームになるわけではないということです。
説明として筋が通っていても、遊んでみると、選択する意味が薄い、必要な情報が足りない、展開が単調、といった問題が出てきます。「正常に動くこと」と「遊んで面白いこと」は別でした。
私はTRPG歴が長く、その経験を頼りに、プレイヤーが何を知って判断するのか、工夫が報われるか、失敗に納得できるか、という視点でディレクションしています。AIの案を採用するだけでなく、却下したり、組み替えたりする判断が必要でした。
経験が少ない場合でも、短い試作と初見テストを繰り返すことで補えると思います。危険なのは、AIの説明がもっともらしいことを、面白さの確認が済んだことと取り違えることです。AIを使いこなす差は、指示の書き方だけでなく、出力を評価し、修正する力にも表れると感じています。
制作費を抑えられても、売れる保証はありません。作品を知ってもらい、魅力を理解してもらい、購入を検討してもらうための活動が必要です。
ストアページ、紹介動画、体験版、メディアや実況者への案内、イベント参加、発売時期、価格、発売後の対応。こうしたパブリッシングは、開発とは別の仕事です。外部パブリッシャーがいなくても、自分で担う必要がありますし、会社に依頼すれば必ず売れるというものでもありません。
本作も、まだ発売前です。現時点で語れるのは制作費と制作上の経験であって、商業的な成功ではありません。売上や自己作業まで含めて回収できるかは、発売後に検証したいと思っています。
今回の開発で得た実感は、AIは制作に踏み出す資金面のハードルを下げてくれる。ただし、面白さの判断も、作品を届ける仕事も、人間の側に残るということです。
『いつまでも美シク』は、現在Steamで体験版を公開中です。この制作方法でどんなゲームができたのか、実際に遊んで確かめていただければ幸いです。
Steamいつまでも美シク - Villa NEPENTHES -
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