こんにちは、『らくがきスマッシュ』をひとりで作っている白鳥のぞみです。 自分で描いた落書きがそのままファイターになって、最大4人で吹っ飛ばし合う対戦アクションを、10月22日に Steam で発売しました。
▼Steam(790円・Windows / Mac) https://store.steampowered.com/app/5329870/
今回は「どうやって作ったのか」の裏話を、うまくいったことも失敗したことも正直に書いてみます。個人でゲームを作っている方の参考になればうれしいです。
最初から本番のゲームエンジンで作り始めず、まずはブラウザで動く試作を作りました(TypeScript + Three.js + 2D の物理エンジン)。 目的はひとつだけ。「描いた絵で戦うのは、本当に面白いのか?」を早く確かめることです。
見た目は上の左側のとおり、真っ白なキャンバスと四角い足場だけ。でも、ここで描いた丸や棒人間が実際にぴょんぴょん跳ねて殴り合うのを見て、「これはいける」と思えました。 試作は1ファイル約5,700行まで育ち、技30種・シールド・投げ・崖つかまりまで入りました。
本番は Unity で作り直しました。ここで一番役に立ったのが、試作のコードから数字と計算式だけを全部抜き出した設計書を先に作ったことです。 技の威力、吹っ飛びの計算式、描いた絵から強さを決める式、色から属性を決めるしきい値……。
「見た目は全部作り直すけど、遊んだときの手触りは試作と同じにする」ための物差しです。移植のあとで「なんか前より重い?」と感じたときも、この設計書と見比べれば、どこがズレたかすぐ分かりました。
いちばんよく聞かれるのがここです。実は、絵の上手さは一切見ていません。見ているのは3つだけです。
能力は5つで、合計は全員同じ。全部強い絵は描けないので、子どもの落書きでも上手な絵でも、ちゃんと勝ち筋が残ります。 ちなみに看板のライオンは、色をたくさん使って大きく描いたので「アタック★5・スピード★1」の、殴りは最強だけど足は遅いパワー型になりました。
正直に書くと、オンライン対戦を作ろうと思ったきっかけは、インディーのマルチプレイゲーム『めっちゃカメレオン』でした。 インディーの規模でも、みんなで遊べるオンラインのゲームが大人気になっている。しかも、自前で対戦用のサーバーを借り続けるのではなく、無料で使える仕組みの上でオンラインを動かしている。 「これならサーバー代を払い続けなくても、個人でもオンライン対戦が作れるかもしれない」と思ったのが始まりです。
その話をそのまま、開発パートナーの AI(Claude)に相談しました。めっちゃカメレオンの部屋の作り方や友だちの招き方を一緒に調べて、らくがきスマッシュは Steam で売るゲームなので、Steam が無料で用意しているロビーと通信の仕組みを使うことに決めました。
自前のサーバーを持たないので、遊ぶ人が増えても毎月の費用は増えません。お手本にさせていただいた『めっちゃカメレオン』には、本当に感謝しています。
ひとりで作っていると、テストプレイが一番時間を食います。そこでゲームの中に、起動すると自動で遊んで、画面を撮って、終わったら閉じるモードをたくさん仕込みました。
上の画面は、全部ゲームが自分で遊びながら撮ったものです。新しいトレーラーも、ほぼこの仕組みで撮った映像でできています。
個人開発の強みは「決めたら、すぐ出せる」ことだと思っています。レビューや感想で「ここが物足りない」と言われたところを、そのまま次のアップデートにしています。 自動で遊んで撮る仕組みがあるおかげで、毎回ぜんぶを手で遊び直さなくても、安心して出せるようになりました。
発売してしばらくして、ストアの看板(カプセル画像)を見直して気づきました。 前の看板は、マスコットがペンを持って跳ねているかわいい絵。でもこれだと「自分で描いた絵が戦うゲーム」には見えないんです。既製のキャラで遊ぶ対戦ゲームに見えてしまう。
正直、せっかく作った絵を変えるのは迷いました。でも思い切って、描いたライオンが仲間と一緒にボスへ飛びかかる絵に描き直しました。 看板は「何のゲームか」を一瞬で伝える場所なので、ここは最初からもっと考えるべきでした。
最近、「Steam の審査が遅い」というニュースが話題になっています。Valve の発表では、ここ数か月で審査の申請が大きく増えていて、ふだん3〜5営業日が目安の審査に、今は最大12営業日かかることもあるそうです。
個人的には、その背景に AI の広がりがあると感じています。エンジニアではない人でも、AI の力を借りて気軽にゲームを作れるようになった。Steam の市場が一気ににぎやかになったのは、作り手が増えた証拠でもあると思います(私自身も、まさにその一人です)。
らくがきスマッシュも、実際に審査には時間がかかりました。もともとは 10/16 発売の予定で「近日登場」を出していましたが、審査を待つうちにその日を過ぎてしまい、発売は 10/23 になりました。
正直に書くと、途中で一度「やり直し」になっています。原因はゲームの不具合ではなく、ストアの申告項目の書き忘れ1か所でした。直して出し直してから、通過までにさらに2週間ほどかかっています。
これから Steam に出す方へ、自分の経験からのアドバイスです。
ここまで読んで「ひとりでこの量を?」と思った方もいるかもしれません。正直に書くと、らくがきスマッシュは AI をパートナーにして作っています。担当はこんな感じです。
一人ひとりに得意なことを任せて、自分は「決める」と「確かめる」に集中する。2週間で3回の大型アップデートを出せたのは、この分担のおかげです。
今年、パソコンのグラフィックボードを RTX 5070 Ti に乗り換えました。振り返ると、これが一番大きな決断でした。
動画を作る H3 のような AI を、ネットのサービスではなく自分のPCで動かせるようになったからです。
PV のシーンを納得いくまで作り直せたのは、このグラボのおかげです。個人で AI を使ってゲームを作るなら、ここへの投資がいちばん効いたと感じています。
なお、Steam のストアページでは「一部のイラストと音楽に生成AIを使用」と開示しています。ゲームのプレイ中に生成AIは使いません。
発売してすぐの頃から、ずっと遊んでくださっているプレイヤーさんがいます。 プレイ時間はもう数十時間。アップデートを出すたびに感想のコメントをくださって、Steam にもレビューを書いてくださいました。
レビューには「操作が難しくないのに、ちゃんと自分で操作している面白さがある」「ひとりでもやり込める要素が多い」と、遊んだ人にしか書けない言葉が並んでいました。 良いところも物足りないところも、正直に伝えてくれる。その声を読むたびに「もっと面白くしたい」と思えて、気づけば次のアップデートを作り始めています。
2週間で3回の大型アップデートを出せた本当の理由は、AI でもグラボでもなく、こうして遊んで声を届けてくれる人がいるからです。本当にありがとうございます。
発売してから、ありがたいことに、らくがきスマッシュを地域のいろいろなイベントで使っていただけるようになりました。
ペンを持った子どもたちが、思い思いの落書きを描いて、それがそのまま画面の中で動き出して戦う。 上手な絵も、ぐちゃぐちゃの絵も、同じように主役になれる。 「描いた絵が戦う」というアイデアを、たくさんの子どもたちに直接触ってもらえる機会があることが、今は何よりうれしいです。
ひとりでパソコンに向かっていると、「これ、本当に誰かに届くのかな」と不安になる夜もありました。 でも今は、このゲームを作って本当によかったと心から思っています。
『らくがきスマッシュ』は、自分の描いた落書きが主役になるゲームです。絵が苦手な人ほど、変な形の落書きが意外と強くて笑えます。
これからも更新を続けていきます。 この記事が少しでも参考になった・面白かったら、いいね をもらえるとすごく励みになります! 「こんな落書きを描いたらこうなった」という報告も、X(@ViVi_gram)で待っています。
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