前回は『GEKOKUJO: Vagrant Crown』がどんなゲームかと、いちばんの売りである「擬似プレイヤーシステム」について書きました。今回は開発ログです。
先日、体験版を新規開始からエンディングまで、自動で通すことができました。19分06秒、進行が止まった箇所はゼロ。ずっと欲しかった一本です。
ただ、素直に喜べませんでした。同じ日に、そのまま出していたら詰んでいた不具合が3つ見つかったからです。
体験版は日本語・英語・中国語で出す予定なので、画面に出る文字を全部「翻訳できる形」に直す作業をしていました。単純作業のつもりでした。
途中で手が止まりました。章クリアの判定が、倒した敵の名前を日本語の文字列と見比べて行われていたのです。
つまり素直に翻訳すると、英語版ではボスを倒しても永久にクリアにならない。
内部で使う名前(変えない)と、画面に出す名前(訳す)を切り離して解決しました。役割名や地名も同じ作りだったので、まとめて直しています。
怖いのは、多言語の作業をしていなければ、たぶん気づかないまま出していたことです。日本語で遊ぶかぎり、最後まで普通にクリアできてしまうので。
ついでに、日本語で遊んでいても文字化けしていた箇所が9つ見つかりました。ボタンに「UI_YES」、職業欄に「NPC_JOB_HUNTER」と、内部の名前がそのまま出ていました。
体感の話ではなく、数字の話です。
強さを計算し直す処理が「経験値が入ったとき」と「セーブを読んだとき」にしか走らず、起動した直後だけ、どちらも通らずに古い値が素通りしていました。最初の1回戦って経験値が入った瞬間に、正しい値へ跳ね上がります。
つまり初戦だけが不当に苦しい。初見の人が最初に触る戦闘です。
どのくらい違うのか、本物の戦闘処理でそれぞれ40回ずつ戦わせて測りました。
狼に40戦0勝でした。しかもその狼は、物語の最初のイベントへ向かう道中に出てくる相手です。
「なんとなく序盤がキツい」で済ませていたら、原因にたどり着けなかったと思います。体感を疑ったら、数字を取りに行く——それだけの話でした。
これがいちばん意外でした。
作業のたびに、書き換える前のファイルをプロジェクト内のフォルダへ保管していました。安全のつもりでした。
ところが、その保管フォルダに入っていた古いスクリプト41本が、エンジンの管理表を乗っ取っていました。エンジンは「この名前の部品はここ」という一覧を作るのですが、そこにバックアップ側が入り込んでしまう。
結果、3分待っても主人公が出てこない=実質起動しない状態になりました。
厄介なのは、普段は起きないことです。プロジェクトを取り直す、キャッシュを消す、別のPCで開く、製品として書き出す——そのどれかをやった瞬間に、誰でも踏みます。「自分の環境では動くのに」の典型でした。
バックアップをプロジェクトの外へ出して解決しています。
不具合の話ばかりでもなんなので、前に進んだ分も書いておきます。
ギルドの掲示板を4件→10件に。 それまで掲示板に並ぶ4件のうち3件が「何かを倒す」で、実質1種類しかありませんでした。採取・護衛・調査を足して4種類に。護衛は依頼人が本当に付いてきます。置き去りにすると達成になりません。
危機で加勢に来る相手を「先着順」から「借りのある相手が優先」へ。 このゲームは「一緒に戦った相手が、次の危機で駆けつけてくれる」を売りにしています。ところが実際は、たまたま近くにいた人が先着順で来ていました。恩義のある相手を優先し、その人だけ少し遠くからでも駆けつけるようにしました。
そして、加勢が瞬間移動をやめて走って来るようになりました。 以前「シームレスな戦闘なのに敵がワープするのは意味がわからない」と自分で言って敵のワープをやめたのですが、味方だけ直し忘れていました。敵は走って間合いを詰めるのに、味方は真横に湧く。言われてみればひどい話です。
加勢の名前も出るようになりました。 それまで「加勢」としか表示されず、誰が来たのか分からなかった。恩義で選ぶようにしても、名前が出なければ「あの時の人だ」と気づけません。この2つはセットでした。
今回いちばん実感したのはこれです。
エンディングまで通ったのは事実ですが、その裏で「英語版が詰む」「初戦が6割の強さ」「環境によっては起動しない」が同時に生きていました。通しプレイが1本成功したことは、出せる証明にはならなかった。
引き続き、性能の確認と、製品として書き出したexeでの通しプレイが残っています。エディタ上で動くことと、書き出して動くことも、また別なので。
体験版は「狼との出会い」から始まります。傷ついた狼を助け、絆を育て、やがて相棒として共に戦う——その入口だけでも、この世界の"生きている感"を感じてもらえるように作っています。
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