以前の記事でも触れましたが、『紅蜘蛛外伝:暗花』以後のBGMは、塩生康範さんに作曲していただいたテーマ曲をSunoでアレンジした楽曲を使用しています。
『暗花』の頃のSunoのアレンジ機能はかなり奔放で、「アレンジ」と言いつつ元のフレーズのかけらも残らないことも多い状態でした。
それが『紅蜘蛛リマスター版』の頃になると、同じプロンプトでも「映画のサウンドトラック風に」と指定するだけで、多彩なスタイルで原曲のフレーズをうまく取り込んだ良い感じのアレンジを作ってくれるようになっていました。
ところが、『紅蜘蛛2リマスター版』の開発が進み、いよいよ楽曲アレンジに着手しようと久しぶりにSunoの編集画面を開いた私は、大きな困惑に見舞われます。
Sunoが「V6」にバージョンアップされたことで過去のエンジンが使えなくなっていた上、既存曲の一部を切り出してモチーフとしてアップロードすると、Sunoから「著作権登録されている楽曲だからダメだ」と跳ね返されてしまったのです。
確かに『紅蜘蛛』シリーズのOSTは各種配信サービスでリリースしています。画面には「あなたがその曲の著作権者である場合はサポートにメールで連絡しろ」とあったため問い合わせたのですが、自動返信で戻ってきた回答は「現在のSunoには著作権者がアップロードする楽曲を例外として処理する仕組みがないので諦めろ」という耳を疑うものでした。
めげずに人間の担当者へ繋ぐよう再問い合わせを行いましたが、返ってきたのはまったく同じ回答。システム上の回避策がない以上、諦めるしかありませんでした。
仕方がないので塩生さんにご相談し、『紅蜘蛛2』の楽曲の中から「ここをモチーフにするべき」という部分を抜き出し、単音+簡単なコードで構成したシンプルな音源を新たに作成していただきました。
塩生さんは快諾してくださり、数日後に届いた音源を試したところ、今度は無事にアップロードすることができました。
しかし、本当の苦労はここからでした。
Suno V6ではアレンジ作成時に「元の音源をどの程度参照するか」というパラメーターを指定できます。ところが、「カバー」を選んでこれを少しでも「参照する」側に倒すと、テンポも雰囲気も全く変わらない曲ばかりが量産されてしまうのです。
ちなみに「インスピレーション」を選ぶとモチーフは影も形もなくなり、参照されるのはコード進行程度になります。
塩生さんのメロディ(いわゆる塩生節)は強い抒情性を持っているため、Sunoがその特徴に引きずられすぎてしまうようでした。標準の「V6 Pro」モードでは使いものにならず、実験的なアイデア向けとされる「V6-wild」モードに切り替え、以下のように極端な設定を試みました。
(※「奇抜さ」は同一曲内での雰囲気の変化度合いを示すため、途中で展開を変えたくない今回の用途では邪魔になります)
この設定でようやく「マシなもの」が出力され始めましたが、それでもメロディラインはほぼ原曲のままで、BPM指定をいくら変更しても元の速度から離れてくれません。音色に「二胡」を指定していたことが強く引きずられていたようなので、Geminiと相談しながらプロンプトの足し引きを繰り返し、なんとか120BPMの楽曲を出力させるところまでこぎつけました。
V6では曲の長さを指定できる機能が追加されましたが、「4分」と指定しても「最初の1分半しか音がなく残りは無音」だったり、最悪の場合は「4分間ずっとノイズ」といった出力が頻発します(後者は旧バージョンでも時々ありましたが、V6-wildでは発生頻度が跳ね上がりました)。
現状、10曲作ってまともに使えるのは1曲あるかないかという歩留まりの悪さです。
さらに月間の出力上限(60曲分)があるため、以前のように断片を切り出して「ニコイチ・サンコイチ」で繋ぎ合わせる制作手法も難しく、v6-wildでうまくできた曲をv6 Proでアレンジしてみたりしつつ、今作では全体的に曲の使用数を抑える方向で調整を進めています。
そして先日、12時間ほど集中して生成・試聴作業を続けていたところ、耳に難聴のような違和感が現れました。
原因を調べるために音源のアナライザー(周波数分析)を確認してみたところ、驚くべき事実が判明します。なんとSunoが出力する楽曲の中には、40Hz以下の超低周波帯域の音圧が異常なほど高くなっているものが存在していたのです。 人間には聞き取りにくい超低周波が過剰な音圧で出力されていたため、知らず知らずのうちに耳へ強い負担がかかっていたようです。
Suno単体でもAI生成音源特有の『聴こえない超低周波(40Hz以下)が爆発する現象』は起こるそうなのですが、今回は塩生さんからいただいたACEのモチーフ音源に超低周波が含まれていたものをSunoが更に増幅してとんでもない音圧になっていたことが分かりました。
慌ててハイパスフィルター(ローカット)を挟んで帯域を削る処理を追加しましたが、AI生成音源をそのままモニター・使用することの危険性を痛感させられた出来事でした。
こうした試行錯誤とトラブルシューティングを重ねながら、今日もアレンジ曲の制作を続けています。以下が、そうして完成した楽曲の1つです。
※応援ボタンを押していただけると(ログイン不要)見てもらえる確率がちょっぴり上がります。応援よろしくお願いします
紅蜘蛛2/Red Spider2リマスター版(Win/Mac/Android/iOSで広告・課金一切なしの完全非営利無料配信)のリリースは来年1月末を目指しています。
興味を持った方は是非ウィッシュリストにご登録ください。
また、昨年リリースしたシリーズ1作目のリマスター版「紅蜘蛛/Red Spider」リマスター版や一昨年リリースした紅蜘蛛外伝:暗花もフルスチル化作品ですのでお気軽に遊んでみてください。いずれもWin/Mac/Android/iOSで完全非営利無料配信中です。
フォローすると、開発ログや新作ゲームの公開が通知されます