現在制作中の『紅蜘蛛2』リマスター版は、すべての場面を3Dグラフィックのスチル(静止画)で構成する「フルスチル形式」を採用しています。総カット数は1,500枚を超えます。
個人制作のインディーゲーム開発において、モーションキャプチャなどの大型設備を用意するのは現実的ではありません。そのため、劇中のキャラクターが見せるすべてのポーズは、3D作成ソフト(iClone)上でアバターのボーン(骨組み)を手作業で動かし、一つひとつ作っています。
ですが、このポージング作業が想像以上に一筋縄ではいきません。
ちなみに、私は3D CGに関しては完全に独学です。他の汎用3Dツールを横断して使いこなせるわけではなく、iCloneの機能を実地で触りながらすべて手探りで習得してきました。
以前に解剖学を学んだ経験があるため「人体の骨格や関節の構造」自体は頭に入っているのですが、それが3Dアバターのポーズ作成にそのまま役立つかと言えば、残念ながらそう甘くはありませんでした。現実に即した正しい骨格構造と、3Dソフト上のボーン(骨組み)やIK(インバース・キネマティクス)のデジタルな挙動は別物だからです。
ポーズ編集の方法には、手首などの末端パーツの位置を直接指定して自動で関節を追随させる方法(IK)と、各関節をひとつずつ回転させて末端の位置を変えていく方法(FK)の2種類があります。しかし、どちらか一方のアプローチだけでは意図した自然なポーズになりません。
いきなり末端パーツの位置を直接引っ張ると関節が不自然にねじれてしまうため、まずは関節をひとつずつ曲げて大まかに狙った形を作り、そこから末端パーツの位置をミリ単位で微調整していくという二段階のプロセスが必要です。
そのため、ただ片腕を上げて合図を送るだけのポーズであっても、納得のいく形にするまで十数分かかります。1,500カットぶんのポーズを毎回ゼロから調整していては、どれだけ時間があっても足りません。
一応、市販のポーズテンプレート集も存在します。例えば『AccuPOSE INFINITY』というアセットは、会話や食事、モデル風の決めポーズからパルクール、銃撃まで1,400種類のポーズが収録されて149ドル(現在の為替で約23,500円)です。
個人開発で、しかもフリーゲーム制作用に導入する素材としてはやや躊躇する価格でしたが、決め手となったのは「Martial Arts」カテゴリに『紅蜘蛛』シリーズでキャラクターが使用する「詠春拳」や「ムエタイ」のポーズが含まれていたことでした。
特に格闘系のポーズは人体の重心や捻りの再現が極めて難しいため、このテンプレートを導入したことで初期制作の時間を大幅に圧縮することができました。
とはいえ、汎用ポーズ集は対応ジャンルが広い反面、特定ジャンルのマニアックなバリエーションには乏しいという限界があります。例えば銃撃ポーズひとつをとっても、香港映画でお約束の「片手撃ち」は2種類程度しか含まれていません。
現代の実践射撃においては両手保持(ツーハンドグリップ)が標準ですが、ジョニー・トー(杜琪峯)監督作品などの圧倒的な映像美学に魅せられた身としては、警察官ならともかく、暗殺者や殺し屋には片手で銃を構えてほしいところです。増してや処刑スタイルの至近距離射撃で両手持ちなどあり得ません。
ほかにも、背後から締め上げる暗殺ポーズ、近年の映画では描写が減った喫煙の仕草、その場にあるスツールを抱え上げて構える泥臭い格闘ポーズなど、ノワール作品に必要なシチュエーションは市販のアセットだけでは到底カバーしきれません。
そこでiCloneのカスタムポーズ登録機能を活用し、一度納得のいく形(それっぽく自然に見えるポーズ)ができたら、即座にテンプレート化してライブラリへ蓄積することにしました。
そうして構築されたカスタムポーズライブラリがこちらです。 ノワール作品を作っていると、開発ツールの管理画面まで物騒な項目で埋め尽くされていくのが少し面白いところです。
『紅蜘蛛2』のスチル枚数は1,500枚超ですが、『紅蜘蛛3』はテキスト量が倍近くあるため、スチル数も3,000枚を超える可能性があります。このカスタムポーズライブラリを蓄積・整備しておくことが、今後の制作期間を短縮するための大きな資産になると考えています。
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紅蜘蛛2/Red Spider2リマスター版(Win/Mac/Android/iOSで広告・課金一切なしの完全非営利無料配信)のリリースは来年1月末を目指しています。
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また、昨年リリースしたシリーズ1作目のリマスター版「紅蜘蛛/Red Spider」リマスター版や一昨年リリースした紅蜘蛛外伝:暗花もフルスチル化作品ですのでお気軽に遊んでみてください。いずれもWin/Mac/Android/iOSで完全非営利無料配信中です。
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