リマスター版では実際の香港ロケハンで撮影した写真を元に背景やセットを作成していますが、実は紅蜘蛛外伝:暗戦を制作するまで、私は一度も香港に渡航したことがありませんでした。極度の飛行機嫌いで、パスポートすら持っていなかったのです。
当時はGoogleマップで地理を調べ、現地へ行く知人に「もし近くに行く予定があれば」と撮影をお願いして資料を集めていました。
しかし諸事情から「どうしても命あるうちに現地へ行かなければ」と思い立ち、2015年の年末から年始にかけてstudio waspのメンバー3人で、ついに初めて香港の地を踏みました。
初めての海外旅行でしたが、精力的に数々の香港映画のロケ地を巡りました(当時の旅行の様子はこちらのまとめに掲載しています)
現地ではバス、MTR、フェリー、軽鐡、緑色小巴、高速船、トラムなどあらゆる交通手段で街を移動しました。その中で強く実感したのが、「香港は公共交通機関、特にバス網が圧倒的に発達している」ということでした。主要なバス停には何系統もの路線が乗り入れ、どこへでもアクセスできます。そして自家用車を所有している人はごく僅か(1割未満)だという現実を知ったのです。
それまで映画を通じて知っていた香港では、自家用車移動がスタンダードに見えていました。今思えば、それは撮影上の都合による表現だったのでしょう。
渡航前の『紅蜘蛛』シリーズでは、移動手段といえば自家用車かMTRが基本でした。しかし現地の交通インフラを身体で理解した結果、続く『紅蜘蛛3』からはバスをはじめとする多様な交通手段が作中に登場するようになりました。
その後も渡航を重ね、映画のロケ地だけでなく『紅蜘蛛』の舞台となるロケーションの取材を行いました。
リマスター版の制作では、当時の写真を元に背景を作り直すと同時に、「作中のキャラクターたちの移動ルート」を改めてゼロから検証し直しました。
1作目は舞台が限定的だったため大きな影響はありませんでしたが、2作目(『紅蜘蛛2』)のリマスターを作り始めると、いくつもの違和感が浮き彫りになってきました。 例えば、旧作のシナリオでは、長沙にいる天狼・陳一元と九龍塘にいる越児の合流地点を「土瓜湾」(1枚目の写真の場所)に設定していました。しかし、実際の地理と交通手段で考えてみると、最終的な目的地である大帽山の隠れ家に向かうならもっと西で待ち合わせたほうが良いのではと思うようになりました。
そこで合流地点を「葵興站(クワイヒン駅)」へと変更しました。これにより、天狼側は長沙から車で約35分、越兒側は九龍塘からMTR(地下鉄)で約30分となり、両者がほぼ同時に合流できる極めて合理的なタイムラインが完成しました。
待ち合わせ場所や移動手段を変えれば、当然、移動にかかる時間やタイムラインが変わります。それに伴い、登場人物たちのセリフ(待ち合わせ場所の指定など)にも修正が必要になりました。
香港の地理や位置関係を把握した上で香港映画を見直すと、「さっきまであの場所にいたはずなのに、次のカットで全く別の場所にワープしている」という撮影上の不整合が目につくようになります。
場所と移動手段の見直しによって、『紅蜘蛛2』における地理的な違和感はだいぶなくなったのではないかと思います。撮影許可や現場の制約に縛られないのはゲームのアドバンテージかもしれません。
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また、昨年リリースしたシリーズ1作目のリマスター版「紅蜘蛛/Red Spider」リマスター版や一昨年リリースした紅蜘蛛外伝:暗花もフルスチル化作品ですのでお気軽に遊んでみてください。いずれもWin/Mac/Android/iOSで完全非営利無料配信中です。
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