はじめまして。 個人ゲーム開発者のMed.y.mです。
現在、SRPG Studioを使用して、長編ファンタジーSRPG『Verdant Requiem』を制作しています。
本作は、剣と魔法の世界を舞台にしながら、
といった要素を、物語だけでなくゲームシステムにも組み込んだ作品です。
私は普段、救急医として働いています。
医療現場で感じてきた「人は、何を為すにも健康でなければならない」という感覚を、ファンタジーSRPGの形に落とし込んだのが『Verdant Requiem』です。
今回は、本作がどのようなゲームなのか、そしてなぜこの作品を作り始めたのかをご紹介します。
『Verdant Requiem』は、複数の国家と思想が衝突する大陸を舞台にした、長編ファンタジーSRPGです。
物語の中心となるのは、塩を巡る争いです。
現代は飽食の時代です。 にもかかわらず、低栄養、低Na血症とよばれる病態が消えるわけでもない。
ならば、現代よりも過去の性質を持つファンタジー世界において、塩や食糧で困らないはずがない。
そんな視点が本作の製作の起点となっています。
塩は単なる調味料ではありません。
人々の生命を維持する資源であり、軍を動かす物資であり、国家の存亡を左右する戦略資源でもあります。 塩を独占する教国。
鉄と軍事力を持つ帝国。
複数の国家が集まって成立した諸国連合。
それぞれの国が、自国の正義と生存を懸けて争う中、主人公レオニスたちは大陸規模の戦乱へ巻き込まれていきます。
多くのファンタジー作品では、戦争の中心として剣、魔法、英雄、怪物などが描かれます。
しかし現実には、どれほど強い兵士がいても、食べ物や水、物資がなければ戦い続けることはできません。
怪物級の兵士も、低栄養でガリガリ、低Na血症で意識が混濁し痙攣でもしたら、戦場で役に立たない病人なわけです。
そこで本作では、軍需管理をゲームの重要な要素として取り入れました。
マップや拠点では、塩や食糧を獲得し、部隊の維持に使用します。
塩が不足すれば「塩欠病」が発生し、食糧が不足すれば「飢餓」が部隊を蝕みます。 敵を全滅させることだけが、戦いではありません。
次の戦いまで兵士を生きて連れていくことも、指揮官の役目です。
集めた塩、食糧、鉱物は、軍需物資として取引できます。
戦況や部隊の状況を見ながら、
「今は武器を買うべきか」 「食糧を備蓄するべきか」 「将来のために鉱物を残すべきか」
といった判断を行います。
資源には限りがあるため、すべてを同時に満たすことはできません。
そして、この一挙一動が主人公の"属性"すら規定することになります。
私がこの作品を作ろうと思った背景には、医療現場での経験があります。
救急医療では、目の前の患者を救うために、短時間で多くの判断を求められます。
しかし、治療は一つの正解を選べば終わるものではありません。
限られた人員、時間、病床、薬剤、医療資源の中で、何を優先するのかを考え続けます。
「最も理想的な治療」と、 「今この場所で実行できる最善の治療」は、 必ずしも同じではありません。
この感覚は、戦術ゲームと非常に相性がよいのではないかと思いました。
臨床においては、目立たない要素に足元をすくわれることもあります。
戦争も同じです。
前線で剣を振るう英雄だけではなく、食糧を運ぶ者、物資を管理する者、傷病者を支える者がいて、初めて軍は存続します。
そのため『Verdant Requiem』では、華やかな戦闘の裏側にある「生き延びるための仕組み」を描こうと考えました。
塩は、誰もが知っている身近な物質です。
しかし同時に、人間が生きるうえで欠かすことのできないものでもあります。
料理に使われ、保存に使われ、交易品となり、時には国家が管理する資源にもなりました。
ファンタジー世界においても、塩は非常に説得力のある戦略資源になります。
金や宝石よりも地味ですが、持たない者は生きられません。
誰もが必要とするため、独占すれば大きな権力になります。
『Verdant Requiem』の世界では、この塩を巡る支配と格差が、国家間の対立へつながっています。
資源を奪い合う戦争の中で、正義とは何か。 均衡とは何か。 誰かを救うために、誰かを犠牲にしてよいのか。
塩は、本作のゲームシステムであると同時に、物語全体を貫く象徴でもあります。
制作を始めた当初は、ここまで大規模な作品になる予定ではありませんでした。
フリーゲームを完成させることが最初の目標だったのです。
しかし、世界設定を考え、登場人物を増やし、国家ごとの事情を掘り下げていくうちに、
「この国にも正義がある」 「一つの結末だけでは、この物語を描き切れない」
という思いが強くなっていきました。
その結果、物語は複数のルートへ分岐し、のべ90マップ以上の長編作品へと成長しました。
また、さらにここまで作り込んだのならCVが欲しい...そんな思いから支援会話のCVも導入中です。
勧善懲悪、という単純な物語ではありません。 一見、悪人に見えても、
・祖国を守ろうとする者
・信仰を守ろうとする者
それぞれの人物が、それぞれの立場から正しいと思う道を選びます。
主人公達も同様です。 プレイヤーの選択によって、仲間の運命や国家の未来も変化します。 同じ人物であっても、選んだ道によって味方にも敵にもなり得ます。
戦争を描く以上、一つの陣営だけが完全に正しい物語にはしたくありませんでした。
『Verdant Requiem』は、基本的に個人で制作しています。
シナリオ、マップ、ゲームバランス、UI調整、システム構築、演出、ローカライズなど、多くの作業を一つずつ進めています。
制作にはSRPG Studioを使用していますが、標準機能だけでなく、多数の独自システムやプラグインも導入しています。 コード、画像、動画などでAI併用しながら作業をしています。 これも、本業を続けながらの作業なので助けられている面が大きいです。
複数人で作業してみるのも楽しいのでは...そう思う瞬間もありますが、個人製作だからこそ出来ることがあると割り切っています。
戦闘結果予測、攻撃範囲、杖の射程、追撃表示、挟み撃ちなど、プレイヤーが判断に必要な情報を把握しやすいように調整しています。 キーボード操作を主体に行う私にとってはゲームパッド事情が疎いのですが、その辺りにも配慮できれば...と考えて調整中です。
拠点では、移動食堂、派遣任務、鉱物研究、軍需取引などを利用できます。 戦闘だけを繰り返すのではなく、仲間の育成や部隊の準備を通じて、自分なりの軍を作っていくゲームを目指しています。
味方ユニットには支援会話があり、物語の進行だけでは見えない一面が描かれます。
戦争中の緊張した会話だけでなく、食事、故郷、家族、過去の失敗、将来への不安など、彼らが一人の人間として生きていることを感じられる内容を目指しています。
まばたき、リップシンクなども導入し、CVも入ったことで活き活きとした支援会話が見られます。
現在は、日本語版だけでなく英語版の制作も進めています。
長編作品を翻訳する作業は、想像以上に大変です。
単純に日本語を英語へ置き換えるだけでは、人物の口調や国家ごとの文化、宗教的な表現、固有名詞の意味が失われてしまいます。
そのため、用語集を作成し、キャラクターごとの話し方を整理しながら、少しずつ英語化を行っています。
英語体験版も公開し、海外のプレイヤーにも遊んでもらえる作品を目指しています。
個人制作では、思うように進まない日もあります。
実装したシステムがうまく動かず、何日も原因を探すこともあります。
翻訳、デバッグ、UI調整など、完成に近づくほど作業量が増えていく感覚もあります。
それでも、少しずつ形になっていく作品を見ると、続きを作りたいと思えます。
キャラクターが動き、会話し、戦い、プレイヤーの選択によって異なる未来へ進んでいく。
頭の中にしかなかった世界が、一つのゲームとして遊べるようになっていくことが、個人制作の最大の魅力だと思っています。
『Verdant Requiem』は、次のような方に特に楽しんでいただけると思います。
『Verdant Requiem』は、医師として感じてきたことと、子どもの頃から好きだったファンタジーSRPGを組み合わせて生まれた作品です。
「病魔もまた、敵である」
これを軸に世界観が生まれた作品ですが、最後まで製作を続けていければと思っております。
『Verdant Requiem』を、どうぞよろしくお願いいたします。