ローグライク×カード戦闘『Ink & Lore(インク・アンド・ロア)』を開発中です。 本作の面白さの格はカード戦闘です。
しかし、構築したカードシステムは、何となく面白みに欠けるものでした。
本作のカードは 消費制(使うと無くなる)。デッキを積み上げるタイプではなく、 一戦ごとに手札の一瞬をどう使い切るかを問うゲームです。だからこそ、 一枚一枚の「面白さの密度」がそのまま体験の質になります。
(開発中の画面につき、UIの未熟さはご勘弁を…)
いきなりカードを描き始めると、だいたい似たようなカードばかりできます。 そこで先に、Slay the Spire の約270枚を眺めて 「面白さの種類」を6つの語彙に解剖 しました。
本作のカードを並べてみると、このうち2〜3種類しか作れていなかった。 「なんとなく物足りない」の正体は、面白さの語彙が偏っていたからでした。 足りない語彙を埋めることを、設計の最初のゴールにしました。
次に決めたのが 軸 です。各キャラに 3つの戦い方(軸) を持たせ、 それぞれに 「エンジン(積む)→精算(一気に回収する)」のコンボ線を最低1本 通しました。
たとえば剣士の成長軸は「攻撃するたび火力を積む→ある1枚で 積んだ分を2倍にしてフィニッシュ」。 毒軸は「浅く広く塗る→ 毒の量を2倍にする→毒の深さに応じて処刑」。
軸があると、プレイヤーは 「今回はどの軸に寄せるか」 を自分で選べます。 本作はデッキ構築の代わりに 出現率の編集(=好きなカードを刷り増す) ができるので、 「軸を絞る楽しさ」がそのまま自分だけのビルドになります。
キャラの道具から効果が直感できることも大事にしました。 蛍光ペンで線を引いたものは光る、コンパスは円を描いて回る、万年筆はインクが乾いてから効く。 メカニクスが世界観の駄洒落になっている と、説明を読まなくても手が動きます。
消費制のいちばんの快感は、カードがカードを生む瞬間 だと考えました。 そこで「一時カード」(ターン終了で消える使い捨ての小札)を主役級に格上げしました。
「1インクから5アクション」のような、盤面が一気に踊り出すビッグターン を どのキャラでも組めるようにしました。ただし写しやコピーには必ずインクを食わせています。 タダで増えると駆け引きが消える ので、物量の上限は常に「インク管理の腕」に紐づけました。
「楽しさ最優先・実装コスト度外視」で作ったので、当然 壊れ も出ます。
魔導士の「連詠パッシブ(技のたびインク割引)× インク回収パッシブ」の噛み合わせ。 1コストの技が 実質無料で連打 でき、歯止めが所持枚数しかない状態でした。
私が迷った結果、これを即ナーフしませんでした。 壊れには「消して正解」のものと「公認して個性にする」ものがあります。 今回は「連鎖の気持ちよさ」は殺したくなかったので、 カード効果としての連鎖はそのまま残す 調整にしました。 この線引きが設計のいちばん楽しいところです。
面白いカードゲームとは何か。今回作り直してみて、自分たちの答えは 「1枚ごとに“何秒間の迷い”を生めるか」 に尽きました。
強いカードは誰でも作れますが、迷いを生むカード は語彙と軸から逆算しないと出てきません。 この作り方が、少しでも同じくカードゲームを作る方の参考になれば嬉しいです。
フォローすると、開発ログや新作ゲームの公開が通知されます