最初のプロトタイプ開発は、結果としてうまくいきませんでした。
当時は理由が分かりませんでしたが、今、初期に作成した仕様書を読み返すと、その原因ははっきり見えてきます。
ゲームデザインでも、開発力でもありませんでした。
一番足りなかったのは、
「このゲームで、プレイヤーにどんな体験を届けたいのか」
というコアコンセプトだったのです。
今回は、初期に作成したプロトタイプ仕様書を読み返しながら、当時どこでつまずいていたのかを振り返ってみたいと思います。
【資料挿入①:プロト要件】 仕様書を見ると、プロトタイプで検証しようとしていたこと自体は、とてもシンプルでした。
どれも現在のラタタンにつながる、ゲームの核となる要素です。
この時点では、
「ゲームの核を検証する」
という考え方自体は間違っていませんでした。
しかし、仕様書を読み進めると、少しずつ違和感が見えてきます。
【資料挿入②:全体ゲームフロー(プロト用)】 ゲームフローを見ると、
など、多くのゲームサイクルが組み込まれています。
さらに、
【資料挿入③:ゲームコンセプト】 ローグライト。
世界観。
ターゲットユーザー。
ゲーム全体の方向性まで細かく設計されています。
もちろん、製品版を考える上では必要な内容です。
しかし、プロトタイプの段階では、ゲーム全体を作る必要はありません。
ゲームの核となる体験が成立するのか。
そこだけに集中するべきでした。
今振り返ると、プロトタイプの段階でゲーム全体を成立させようとしてしまっていたことが分かります。
【資料挿入④:ゲームパート】 仕様書を読み返すと、さらに興味深いことがあります。
このページには、
戦闘。
修理。
料理。
燃料補給。
運搬。
様々な行動をリズムゲームとして成立させようとしていたことが書かれています。
つまり、
「リズムをゲームに取り入れる」
という考え方は、この頃からありました。
しかし、
「リズムで何を一番気持ち良く感じてもらうのか」
そこまでは整理できていませんでした。
当時の私たちは、
「リズムコマンドで自由にアクションできるゲーム」
というシステムを考えていました。
ですが、それはゲームの仕組みです。
プレイヤーに、
「どんな体験を届けたいのか」
という視点では、まだ考え切れていませんでした。
【資料挿入⑤:「パタポンのコアのおもしろさとは」】 仕様書の中で、一番印象に残ったページがここでした。
ここには、
「キャラクター同士の掛け合いによる気持ちよさ」
という考え方が書かれています。
方向性としては間違っていませんでした。
しかし、その先がありません。
現在のラタタンでは、
「語感の良い言葉が繋がり、気持ち良くリズムに乗る体験」
をゲーム全体のコアコンセプトとして設計しています。
しかし、この頃はまだ、その考え方にはたどり着いていませんでした。
ゲームシステムは考えていました。
しかし、
ゲーム体験を言語化できていなかった。
これが、仕様書を読み返して一番感じたことでした。
プロトタイプがうまくいかなかった理由は、ゲームバランスや操作性ではありませんでした。
そこを評価する段階まで、プロジェクトが到達していなかったのです。
後に小谷さんとも当時を振り返った際、
「グローバルにヒットを狙う基盤となる世界観やキャラクターを固めてからゲームを作り始めるべきだった」
という話になりました。
ゲーム性を議論する前に、作品としての土台がまだ定まっていませんでした。
だからこそ、このプロトタイプは途中で立ち止まり、方向を見直す判断をしました。
当時は苦しい決断でしたが、今振り返ると必要な判断だったと思います。
今回、初期の仕様書を改めて読み返してみると、当時の自分たちがどこを目指し、どこで迷っていたのかがよく分かりました。
現在のラタタンにつながるアイデアは、この頃から数多く存在しています。
一方で、それらを一つのゲーム体験、そして一つの作品として成立させるための軸は、まだ見つけられていませんでした。
ゲーム全体を作ろうとしていたこと。
コアコンセプトを十分に定義できていなかったこと。
ゲーム性を評価する以前に、作品としての土台が固まっていなかったこと。
当時は、それに気付くことができませんでした。
結果として、このプロトタイプは完成には至りませんでした。
しかし、この試行錯誤があったからこそ、自分たちは何が足りなかったのかを知ることができました。
そして、その答えは、次の大きな転機で見つかることになります。
プロトタイプを通して、ゲームデザイン以前に、作品としての土台が必要であることが見えてきました。
次回は、キャラクターデザイナー Nelnalさん と出会い、現在のラタタンにつながる世界観やビジュアルデザインがどのように生まれていったのかを振り返ります。
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